【会計士】僕が監査法人時代、不正会計に直面した時の話①【コラム】

こんにちは、公認会計士のロディです。

今回は、監査実務シリーズです。
私が監査法人時代、実際に経験した事をお話しします。

今回は、「不正」に直面した時のお話です。
我々会計士が普段どんな仕事をしているのか、これで少しお分かりいただけると思いますよ。

もくじ

1.不正の検出
2.監査計画の見直し
3.類似取引の検討(今回はここまで)
4.新たな内部統制の構築
5.不正に直接対応する手続き
6.結果
7.まとめ

なお、本記事はクライアントのセンシティブな内容なので、所々ぼやかし、脚色しています。

1.不正の検出

私が会計士になってちょうど2年が経ったころ、所属していた部署のパートナーより、あるクライアントの主査(現場マネージャーのこと)をしないかという話が来ました。

業種は雑貨を扱う店舗業、規模は資本金5億を超えるいわゆる大会社でした。

私はこの話を喜んで引き受けました。
そしてその2週間後、突如クライアントで不正が発覚したのです。

私はこの時、「面白そうなことになってきたな~」と思っていました。
不正対応ができるのは、非常に良い経験になるので。
しかし、まさかあんな大変なことになるとは・・・。



不正を発見したのは、クライアント自身でした。

多くの不正は、クライアント自身によって発見されます。
監査法人が不正を発見するケースは、実はレアケースです。

不正の内容は店舗業特有の不正で、具体的には以下の通りです。
(レジ担当者による不正です。)

①レジ担当者が、商品の返品処理を行う。
②しかし、実際には返品の実態は無い。
③つまり、お客さんが返品しに来たわけでもないにもかかわらず、返品されたことにし、勝手にレジ上で返品処理をする。
④ここで、実際に商品が返品されたわけではないため、計算上あるべき在庫の量よりも、実際の数量が少なくなってしまう。
⑤一方で、返品にあたっては当然「返金」も行われる。
⑥この返金すべきお金を、架空のお客さんに渡したことにし、当該レジ担当者が懐に入れていた。

かんたんに説明すると、こんな感じの不正です。

どのようにして不正が見つかったかというと、発端は棚卸(商品のあるべき数量と実際の数量とを比較し、ちゃんとモノがあることを確認する手続き)実施時において、多額の差異が生じていたことでした。

Memo

実は店舗小売業において、棚卸差異が出ることは日常茶飯事です。
なぜなら「盗難」があるからです。

ですので多かれ少なかれ、必ず棚卸差異が出ます。(出ないとむしろおかしい)

しかし、不正が検出された店舗では、明らかに盗難の域を超えるレベルの棚卸差異が検出されていました。

これはおかしいということで、次にレジ担当者ごとの商品の返品率を調べました。
すると、通常ではありえない金額の返品処理をしている従業員が見つかったのです。

気になる返品率は、300%(つまり、1個売ったら3個返品される計算)という異常な数値を示していました。
過去まで遡ったところ、合計で3000万も返品していました。

なかなか思い切ってますよね。

監査上もさすがにパスできない金額でしたので、ここから監査計画を見直すことになりました。

2.監査計画の見直し

一言に「計画を見直す」と言っても、具体的に何をするか、気になりますよね。

監査は通常、毎年同じようなことをするので、昨年と異なる事象が起きた場合、その事象に応じて計画を見直すことになります。
今回は「不正が起きた」点が昨年と異なる点なので、この不正が監査にどのような影響を与えるのか考えます。

私が一番初めに気にしたのが、「重要性の基準値」です。
監査では、監査すべき金額ラインが定まっており、これを重要性の基準値と言います。

次の3でお話ししますが、今回の不正は他の店舗でも行われていた不正でした。
これにより、今回の不正が決算書に与える影響は広範囲であると判断し、重要性の基準値を引き下げるべき(より細かく色々見るべき)と結論付けました。
具体的には、いつもの2倍の量(の取引)を見ることになりました。

監査論を少し勉強されている方なら、当たり前に思われるかもしれませんが、手続きを実施する側(私とその他監査チームのメンバー)からすると、やるべき仕事がとても増えるので、最悪の気分でした。

Memo

ちなみに、この不正によって監査時間が通常の2倍になりました。
(=死ぬほど残業しました。)

その他にも色々と見直す点はありましたが、ここでは重要性の基準値についてお話ししました。

3.類似取引の検討

今回は、ある店舗(以下、A店舗とします。)で見つかった不正でした。

そして不正が見つかった場合、他の店舗でも同様の手口による不正が発生していないか、確認する必要があります。

結果、クライアントに他店舗についても検証してもらったところ、同様の手口による不正がなんと5店舗も出てきたのです。
なので、合計で6店舗において不正が行われていたことになります。

まさか、こんなに漫画みたいな展開になるとは・・・。
不謹慎ではありますが、監査実務としては非常に勉強になります。

前半はここまで。

少し長くなりますので、今回はここで区切ります。

ここで、おまけ情報です。

今回のA店舗で起きた不正は合計で3000万でしたが、月ごとの不正金額推移を見ると、実は序盤はあまり金額が大きくありませんでした。

しかし、月日が経つにつれて金額が大きくなり、より大胆に不正を働いていることが分かりました。
そしてこの傾向は、他の5店舗でも同様でした。

数字に人間の欲望に基づく行動心理が表れており、ちょっとした恐怖でした。

 

次回へ続く。

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